ユーザー車検にチャレンジ
みなさんは『車検』というものについて、あらためて考えてみたことがあるでし ようか?
ひとことで言ってしまえば、日本の『車検』というのは、『道路運送車両の保安 基準』という法律にそのクルマが適合しているかどうかを、国の検査場(車検場) でチェックすることなのです。
ちなみに、この『道路運送車両法の保安基準』の元の取り決めは、1951(昭和 26)年に作られました。それから50年ほどの歳月の間に、100回以上の改正が行な われているため、その法律を書き記した書物は、1300ページを超える膨大なものと なっています。
それを聞いて「うへ~っ、そんな難しいことがユーザー車、検ならさっさと退散し たいよっ!」と思われるかもしれません。しかも、相手は機械のカタマリともいえ る“自動車”です。「ガソリンさえ入れておけばクルマは無事動いてくれる。昨日 までそうだったのだから今日もそのはずだ」。そんなノーテンキに構えているドライ バーなら、こんな悲観論が頭を占領しても無理はないかもしれません。
ところが、かつては[整備工場やカーディーラーまかせだった車検]が、ユーザ ーにもやりやすくなりました。それにはいろいろな理由があるのですが、一番大き く変化したきっかけは、-一時マスコミを賑わせていた規制緩和の動きでしょう。こ のとき、車検時に受けなければならない定期点検の項目数が半分に減ったり、車検 場の対応が大きく変わったりして、車検のハードルがぐっと低くなったのです。
ここで説明している『ユーザー車検』というのは、自分でクルマを点検し不具合 はないか(保安基準に適合しているかどうかも含めてOチェックして、もしあれ ば自分で修理(自分でできなければカーディーラーなど整備専門業者にまかせても よい)し、そして自分で国の検査場である巾検場にクルマを持ち込み検査を受ける、 というものです。
『ユーザー車検』という言葉がようやく巾民権を獲得した10年ほど前には「ユー ザ一車検で○○円節約した」とか、「ユーザー車検を通じて日本の車検制度の一端 が理解できた」といった話が、新鮮な驚きとともにあちらこちらから聞こえてきま した。 しかし、最近こういった話題を耳にすることはあまりなくなりました。おそ らく、その頃ユーザー車検に“はまっだユーザーにとっては、二度二度と経験す るうちに、あえて語るほどのことはない、当たり前のこととなっていっだからでし ょう。
ある統計によると『継続検査』(車検の正式名称)全体のなかで、ユーザー車検 の割合は、いまだに10%を超えてはいません。ただし、台数にするとすでに200万 台を突破しており、5年前にはおよそ140万台で6%程度だったので、しだいに増え つつあるといってよいでしょう。統計学者の説によれば、全体の13%を超えると加 速度的にその事柄が増え続け、逆転現象が起きるそうです。最近の事例でいえば、 携帯電話がそうでしょう。 10年程前までは携帯電話を持っている人のほうが珍しか ったのが、いまでは携帯電話を持たない人のほうが少数派になってしまっています。 ユーザー車検についても、やがて同じ状況がやってくるかもしれません。
それはともかく「ひとつ『ユーザー車検』なるものに挑戦してみようではない かにという、そんなチャレンジスピリッツをお持ちの方なら、ぜひこの本を手に 自分のクルマで体験してみてほしいと思います。もちろん、そこまで構えていない、 全くのメカ音痴を自称している読者の方(男女を間わず)であっても、ここを読 めば大丈夫です。エキサイティングな車検体験をしてもらえれば幸いです。
ユーザー車検には、もちろん必要経費を大幅に減らすことができるというメリッ トもありますが、本当の面白さは自分のクルマを自分で点検したり、国の検査場に 持ち込んで、客観的に検査の現場に立ち会えることにあるといえます。
たとえば、体調が悪くなった人が病院に行って、自分は素人であるから専門家で ある医者にすべてまかせておけばいいやと、その検査結果や治療内容を知らないま までいていい、ということがあるでしょうか。自分のクルマをすぺて他人におまか せでは、これと同じです。自分のクルマの調子を自分で確認したり、国の検査場で 客観的に検査されることで、安心を得ることができるのです。
10数年ほど昔、ユーザー車検の本をはじめて作ったとき、筆者の中には「日本の 車検制度は不透明なところが多く、厳しすぎる」という気持ちが強く、そうした不 策理な車検をなんとかクリアする手段としてユーザー車検を紹介したい、という意 川がありました。 しかし、それから世界の整備事情などを取材するにつれ「日本の 車検制度も間題はあるものの、そう悪くないのでは…」と思うようになってきまし た。
たとえば車検制度のない国へ行くと、有害な排気ガスを撒き散らしながら走って いるクルマがいたり、整備不良が原因で事故を起こしたりする光景をたびたび目撃 します。そのため、東南アジアの国の中には、日本の車検制度に学ぼうという動き すらあるほどです。
車検制度に対する考えはいろいろあるかもしれませんが、いずれにしろ2年ごと (新車時は3年、貨物事は1年)の車検は、日頃なにもフォローしていなかった自分 のクルマヘの“まなざじを取り戻す良い機会だと思います。ぜひ、ユーザー車検 にチャレンジしてみてください。